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「わんぱく天国」
三浦按針の墓がある塚山公園──通称「按針塚」は、遊びの「天国」だ。
一郎と明、2人のがき大将が率いる少年たちのグループは、常に対抗しながら遊びの腕を磨いていた。少年団ごっこ、めんこ、たこあげ、母艦水雷、一銭飛行機飛ばし……やがて、ぶつかり合いの中で友情を深めた子供たちの、一大プロエジェクとが動き始める……
昭和10年代の子供たちの姿を描いたこの作品は、佐藤さんの自伝的小説でもある。めんこのルールだとか、凧の作り方、水鉄砲・紙鉄砲の作り方、“てんぐす”のとり方などなど、実に詳細に記されていて、一種、遊びのバイブルと言ってもいい。
しかし、この本は遊びの詳細がわかるから面白いのではない。なんといっても、個性的な子供たちである。その独特な世界である。そして、わーっと盛り上がって、新しい遊びが生まれる高揚感。読み進むうちに、仲間の1人になったような気になってしまう。これが、この本を読むときの最大の楽しみだ。
当時のことなんて何も知らないのに、なんだか懐かしくなる。と同時に、羨ましくもある。
ひとつひとつの遊びを丁寧に描写することで、子供たちの生活が生き生きと甦ってくる。佐藤さん得意のリアリズムの手法が存分に活かされた、見事な作品である。
子供にとって遊びとは「生活」なのだ。この作品を読むと、そのことを強く感じる。
生活とは、生きることである。
知恵を絞って、商売道具(遊び道具)を工面し、大事にし、時に大胆に取り引きする。季節が変われば遊びも変わる。そのために準備をしなければならない。たとえ、長期計画のプロジェクトが動いている時でさえ、あれもこれも遊ばなければならない。子供とはなかなかに忙しいものだ。
テレビゲームに夢中で、塾に忙しいと言われる、現代の子供たちはどうなんだろう?
隣実物語ではないので当サイトでは番外編扱いとするけれど、「だれも知らない小さな国」と甲乙つけがたい、大好きな作品なのである。
(03.2.16)
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