井沢元彦の『逆説の日本史』を読んだら、古代日本への興味が再燃した。
家にあったので、黒岩重吾の作品をいくつか読んでみた。
『天翔る白日』は、天武天皇の後継者争いに破れた大津皇子の小説。
『紅蓮の女王』は、推古女帝が即位する直前までの小説。
『謎の古代女性たち』は、タイトル通り卑弥呼や天照大神、推古天皇などについての考察。
見てきたようになんとやら、じゃないけど、
まるでその場にいたかのように、屋形の様子や、衣服の描写があって、面白い。
もちろん、それなりの下調べがあってのことだろうけど、大半は想像が補っている。
作者は、飛鳥に縁のある人で土地勘もあるそうだから、
大和三山がどう見えて云々というような景色の描写は実感がこもっていて良。
それよりなにより、登場人物たちの心情がなんともなまめかしい。
「紅蓮の」とつけただけに、推古天皇の情熱的な愛憎はすさまじい。
大津皇子は、かなり理想的な人物として描かれているが、
その彼も、最終的には愛のために身を危険にさらし、また若さ故に滅びる。
それが、ただ歴史の裏にこういう事情があったのでは?という想像をした、というのではなく、
生々しい一人の人として迫ってくるものがある。
歴史小説はなんか苦手なところがあったけれど、
ただ歴史上の人物の一生を、順を追ってたどった、というわけでなく、
魅力あるキャラクターとして描かれていて、これらの作品はとても読みやすかった。
政権交代という歴史上の事件を材料にはしているけれど、
テーマはそれじゃなく、人間の愛憎劇。
そして、ロマン。そう、ロマンだ。
作者の中で何を描きたいのかはっきりしているので、伝わってくるのだよ。
「歴史上の人物」に対する遠慮など一切せずに、
自身の想像(ある種の希望)をもって描ききる。
黒岩氏が古代の彼らのことをどんなに好きなのか、ということが伝わってくる気がする。
『謎の〜』は、そんな黒岩氏が古代のこと読み解いていく際の思考がのぞけて、
これはこれで興味深い作品。
堅苦しく難しくなく、丁寧に優しく書かれているので、
古代のことをあまり知らない人にも、わかりやすいかも。
(05.08.21 日記より)