殺人を犯した警察官、梶聡一郎。
妻を殺害後、自首するまでの2日間の行動について、一切語ろうとはしない。
「空白の2日間」にいったい何があったのか?
ミステリーとして評判になり、昨年映画化もされたので、
概略は知っていたつもりだが、予想を裏切る展開、面白さだった。
梶聡一郎の視点で物語が進むことは、一切ない。
刑事、検事、弁護士、事件記者、裁判官、そして刑務所職員。
事件後、梶に関わってきた者たちの視点で、各章が構成されている。
ストーリーは「謎解き」の形をとってはいるけれど、
実は、それぞれを主人公とした、密度の濃い人間ドラマだ。
ひとりひとりに、思いや意地や、悩み、呻きがある。
もともと持っていた誇りが、梶聡一郎に関わることで、触発され、いっそう目覚める。
警察と検察の確執や、事件記者のネタ争い、裁判官の苦悩など、
あまりよく知らない世界のことが、鮮やかに描かれているのも、読み応えがある。
世の中、この物語の主人公達のように、組織になんか負けない、
という気概を持った人たちが、多くいて欲しいと、思わず念じてしまった。
(彼らは、やむなく組織の壁に屈してしまっても、その心はけして負けてはいなかった、と思う)
「人生五十年」
この書にかけた梶聡一郎の思いが、ようやく明かされるラストシーン。
密かに見守り続けてきた「主人公達」とともに、ああ、そうだったのかと安堵した。
そして、やはり、「この男を死なせてなるものか」と強く思った。
なにやら、目の前がさーっと明るくなるような、非常に爽やかな読後感であった。
(とはいえ、そういう理由ならそこまで頑なに黙さなくてもいいんじゃないか、
と、後からちょっと思ってしまったのも、事実なのであった)
(05.10.31 日記より)