あさのあつこ『バッテリー』(文庫版)

天才ピッチャーの原田巧。
たとえ相手が先輩だろうと監督だろうと、そして親だろうと、彼は、自分の意志は絶対に曲げない。
そんな巧と、人を惹きつける才能に長けたキャッチャー永倉豪との、運命的な出会い。

 

*** 1巻 ***
夏の甲子園、第86回全国高校野球選手権大会、開幕。
偶然だけれど、ちょうどタイミングがよい。

正統派、青春ストーリー。少年の成長物語。
これは果たして児童文学か、というくらい読みごたえあり。
いや、中学生にもなれば、このくらいの文章読むか。
自分の体を細胞レベルで感じとるって、
本当にできるもんなんだろうか。
まして、12歳か13歳かそこらで。
でも、きっといるんだろう。そういう人。
「天才」というんじゃなくて、集中している人。
そのために生きている人。
極めるって、そういうことか。

絶対的な自信家。幼いがゆえの、自信。
大人びているようでいて、実はまだまだ子供。
うまく描かれている。
少年たちの今後が楽しみになる、すがすがしい一冊だ。

(04.08.07 日記より)

 

*** 2巻 ***
あとがきで「少年の成長物語などと言わせるものか。友情物語などと貶めたりしない」と書かれてしまった。
でも、そうでしょう?

少年は、自分を信じて、
信じきることで(信じきろうとすることで)、

大人も巻き込み、周囲を変えていく。
その影響力たるや、すごい。
間違いない。
でも、そうありながら、少年自身も変わっていく。
けして妥協するのではなく、より強く大きく。
これを成長といわずして、なんというのか。

大人のやり方、大人の事情に染まることが、
「成長」ではないでしょう。

それに、もう一人の少年だって、やっぱり変わっていく。
大きく、強く。
常に悩みながら。
そして、悩みの質が変わっていく。
それもまた、ひとつの成長。

そういう、若くて、稚拙で、
でもエネルギーに満ちていたときが、あったんじゃない?
わたしにも。
読んでいると、なにかこう、胸がわくわくするような、
懐かしいころに戻るような、そんな興奮がある。

(04.08.12 日記より)

 

*** 3巻 ***
わくわくする、面白い。
レギュラー対1年生で、1年生が勝っちゃうとか、
野球部の未来をかけて強豪チームと試合するとか(試合はこれからだが)、
ネタとしては手あかがついているけれど、
なかなかどうして、純粋に興奮できる。

「スポ根」ものは、漫画ではいくつも読んでいるけれど、
小説では初めてかもしれない。
文章だけで、これだけ盛り上げ、イメージさせるというのは、
なかなかどうしてすごいことだ。
この太陽と土と汗と、ボールとバットとグラブのにおいを、
形は違っても多少なりともわたしが知っているから、
余計に興奮するのかもしれない。

天才「原田巧」を軸に回ってきた物語、
このあとは凡人「永倉豪」の番。
ますます面白くなってきた。

(05.01.18 日記より)


*** 4巻 ***
さあ試合だー! と楽しみにしてページを開いたら、いきなり試合後から始まったので、ちょっと拍子抜けしましたよ。

天才vs凡人(豪はどこまで巧についていけるのか)の構造がより明確に。
なにしろ、「天才・凡人」ペアがもう一組増えたから。
二組の「天才vs凡人」、ひとつの歴史は短く、もうひとつは長い。
はたしてそこに、どんな差が出るのか。
次の対決に期待したい。

そして、乱入してきたのが「一般人」代表、吉貞。
カッコイイから、もてるから、野球をやるんだ、という。
原田も永倉も、なんでそんなに深刻なんだよ? というある意味ノーテンキで明るいキャラ。
実は、前巻まではウルサイやつだなーと、あまり注目していなかった。
まあ、こういうお調子者キャラもいないと、どんどん重苦しくなりそうだしね、くらいに思っていた。
それがここへきて、「なんで野球をやるの?」という命題にストレートに絡んできた。
巧や豪は、まるで野球に命を捧げているかのよう。
でも、多くの部員は、「楽しいから、好きだから、やりたいから、(ときには成績のため)」野球をするのであって、そんなに重たく考えていない。
それでどこが悪いわけ?
と、身軽に飛び込んできた。
そりゃそうだ。たかが中学生の部活だ。そんな深刻なヤツばかりだったらおかしい。
どうかすると、神経削ってまで野球に打ち込んでいる巧や豪ばかりエライような錯覚を覚えそうだけれど、吉貞のような「素直」なのだって、それでいいんだもの。
というわけで、わたしの中では吉貞株急上昇である。

この巻は、巧が暴れない。ジコチューの権化みたいなヤツなのに、おとなしい。
チームメイトとじゃれあうシーンまであって、なんだか丸くなったみたい。
そのせいもあって、ちょっと物足りなさも感じる。
全体に、あまりストーリーは進まないし。
でも、実は物語全体では大きな転換期である。
「個」から「チーム」へと、テーマが移行してきたからだ。
今まで、「原田巧」という天才だけどわがままなヤツ、という「個」が中心だった。
ところが、ここへきて豪、吉貞や東谷に沢口ら1年生、野々村キャプテン、先輩ピッチャーの高槻、海音寺前キャプテン、顧問のオトムライまで巻き込んで、「新田東中野球部」という「チーム」の変化が問われ始めてきた。

そしてもちろん、ライバルチームの存在も大きい。
天才と、凡人と、一般人の、それぞれの活躍と、相互作用がどうでるか、楽しみだ。

(06.3.28 日記より)


*** 5巻 ***
「姫さん」発言がいいかげんうるさいので、豪と巧にはがんばってほしいものだ。
とりあえず、嵐の前の静けさなのか、安定期。
個人というよりも、チーム対チームの構図がより強まった。
巧がいい子ちゃんで物足りないのと、豪が鬱展開でつらいなあ。
次巻あたりでは、大きな展開を期待したい。

(06.12.03 日記より)

 

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