クラゲの飼育で一番大変なのが餌の問題です。ミズクラゲを海で採集して或る程度の期間飼育するだけなら(株)キョーリンのクリーンベビーブラインシュリンプが手軽で良いと思います。
(ワイングラスで飼う場合もクラゲを大きくしたくないので、敢えて餌は冷凍としました)

でも長期間飼育する場合や幼い個体を大きく育てたいのなら、冷凍ブラインシュリンプでは無理なようです。自分で卵から孵化させて栄養分が落ちないうちに与える必要が有ります。
しかしポリプから成体に至るまで、ほとんどこれだけで大丈夫なので、要領さえ掴めば無脊椎動物の中では楽な方かも知れません。もちろん水族館でも規模は違いますが同じ方法ですよ。
(残念ながらクラゲが主食のウリクラゲや、小魚が主食のハナガサクラゲなどは難しいです)

このコーナーでは色々なサイトで集めた情報やjfishMLで教えて貰った事を元にして、試行錯誤の末に私が実行している方法を中心に、少し詳しく解説してみましょう。


【餌の孵化】

餌は市販のブラインシュリンプエッグを孵化させて与えます。ブラインシュリンプ(別名アルテミア又はシーモンキー)の孵化には、ブラインシュリンプ孵化器を使うと便利です。
海水4:水道水1の割合でエアレーションすると25℃の水温で24時間以内で孵化します。
孵化直後のノープリウス幼生が栄養価が高いので、普通は毎日孵します。
脂肪や脂肪酸は豊富なんですが、高度不飽和脂肪酸(DHAやEPA)などは元々少ないので、なるべく早めに与えましょう。孵化後18時間で栄養価は1/3程度にまで落ち込むようです。

分離が分かりやすいようにエアーを止めて2時間放置してみました。アルテミアが下に溜まって殻は上に浮いたり側面に張り付いているので、溜まったアルテミアをピペットでプリンの容器などに集めます。下に溜まるほど量が多くない場合は、ピンライトなどを使って光に集まった所を採ります。
(通常ここまでの分離は不必要です)

アルテミアは洗わないと水を汚す場合が有ります。下は私の洗浄方法です。
このコーヒーフィルターは通販で購入した物ですが、他にもペーパーフィルター等、色々な物が利用出来ます。
淡水の稚魚やマミズクラゲなどに給餌する場合は、塩抜きのためにアルテミア洗浄は不可欠ですが海水魚やクラゲ、しかもボウルなどの別容器で給餌する場合には、絶対に必要という訳では有りません。
しかし殻に付いたバクテリアが孵化と共に急速に繁殖するらしいので、水槽内に残る可能性が有る場合は洗いましょう。

   (1)
右の容器には集めたアルテミア、左のボウルの水には予めお湯を足しておきます。
※温度は適当で大丈夫です。

   (2)
アルテミアをコーヒーのフィルター等に入れます。
※私は蛇口から水は入れていません。

   (3)
ピペットでボウルの水を数回に分けて周りから注ぎアルテミアを洗います。
※水道水を直接入れても死にません。

   (4)
十分に洗ったアルテミアを元の容器に移し、これをピペットでクラゲに与えます。

次の日の準備を忘れないようにしましょう。孵化器に付いた卵の殻を洗い落とし、水槽の海水と水温を調節した水槽水を4:1に入れ、止めていたエアーを入れてブラインシュリンプエッグを入れます。
ブラインシュリンプ孵化器に付属している計量スプーンで、適度な濃度に食塩水を作る事も可能です。
部屋の温度が25℃以下になる時期には、小さなケースに水道水とサーモスタット付きのヒーターをセットして孵化器を取り付けます。


【給餌】

クラゲの数が少なければボウルを使って水槽の外で給餌した方が水を汚しません。
(ボウルを水槽に浮かべて給餌すると楽)
小さめのボウルを使ってクラゲをすくって、大きめのボウルの中で給餌します。クラゲのサイズが大きい場合は酸欠にならないように注意して下さい。
サイズが20センチほど有る場合は逆さまにして口腕に餌を垂らすと良いでしょう。その場合、散らばった餌はやがて触手に紐状に集まるので、ピペットなどでそーっと口腕に付けてあげます。
ボウルの中の水量が少ないので酸欠にならないように水槽の水を少しずつ足しましょう。
食べ終わって水槽に戻すときは、なるべくボウルの水を入れないようにします。
減った分の水は蓋付きのバケツに作り置きした海水を足しますが、水槽が小さい場合は2〜3日に1回比重を計って下さい。蒸発して比重が高くなっていたら海水では無く真水を足します。
(あらかじめ水槽にビニールテープで水面の位置に目印を付けておきましょう)

水槽の中で給餌する場合はピペットでクラゲの傘の中を狙って餌を吹き付けますが、その時に気泡が入らないよう十分注意して下さい。
アルテミアは生きていれば水を汚すことは無いのですが、どうしても底面の砂などフィルターに吸い寄せられるので死ぬと急激に水を汚します。給餌の時にフィルターのスイッチを切れば、有る程度それを防ぐことが出来ますが、クラゲは水流が無いと上手く泳げないので餌の取り込みも悪くなります。
この場合、ろ過装置以外にもう一つ水流を作る装置(外部フィルターなど)が必要になります。


【餌の保存】

■冷凍
余った餌は冷凍保存します。小さな容器に小分けにするか、ラップを敷いて薄く延ばした状態で凍らせた物を割って使うかはお好みですが、家庭用冷蔵庫の冷凍室では急速冷凍が出来ないので保存期間は4日が限度だと思います。

■冷蔵
アルテミアを海水の1/4程の塩分濃度で4℃前後の環境に置けば、ぎりぎり死なない状態で、しかも新陳代謝が極端に低くなるので高栄養のノープリウス期のまま4日ほど保存出来るようです。
少し大きめの容器で保存して下さい。飼育水が少ないと酸欠になりますし4℃の環境は難しいです、うちの冷蔵庫は6℃なので、3日が限度だと思って試しています。

【卵の保存】

ブラインシュリンプエッグは湿気に弱いのでなるべく小さい缶を購入しましょう。もちろん小さい方が割高ですが、孵化率の低下を考えると結果的には得になると思います。
大きいサイズしか入手できなかった場合は、缶を冷蔵庫に入れてそこから直接スプーンで取り出すと長持ちします。
スプーンで直接取り出す方法が出来ない場合は、厚手のビニール袋に入れてから冷蔵庫の野菜室に保管します。そこからなるべく少しずつ瓶に小分けに出して使いましょう。
(冷凍庫に保存する方が長持ちしますが、取り出す時に結露を起こすので結果的には逆に湿気ます)


【裏技】

あらかじめ耐久卵を真水に1時間程浸しておくと、卵の殻が軟らかくなって孵化率が向上するらしいです。 この他、ネッ トを利用して水で一度洗う方法も効果的です。
ビラインシュリンプハッチャーの中で真水に浸しておく場合は微弱なエアーを送って下さい、卵が逆流してチューブに詰まってしまいます。

万能と思われるアルテミアですが、実はビタミンなどのミネラルが不足しているので、市販のビタミンドリンク(成人用の栄養ドリンクはカフェインなどが含まれているので不可)や、500〜1000倍程度に薄めた木酢液を足してやる方法が有るようです。
孵化の際にミネラルを吸収させるのですが、木酢液は水のpHを下げるので孵化率が低下する危険性も有りますし、実際に試す場合は少な目が無難なようです。

孵化する前に卵の殻を無くす方法も有ります。この脱穀処理をしておけば、もちろん殻の分離も不要だし、アルテミア自身も孵化時に消費するエネルギーが少なくてすむので栄養価の高い状態で産まれます。仮に未孵化で有っても餌に利用出来るし、塩素を使っているのでバクテリアの繁殖がほとんど無い綺麗な餌が得られます。
使用する薬品は、水酸化ナトリウムと次亜塩素酸ナトリウムです。次亜塩素酸ナトリウムはブリーチや台所の漂白剤で代用可能ですが、日本で販売されているものには微量の界面活性剤が入っているので推奨しないとの事です。
水酸化ナトリウムは劇物指定なので、薬局で書類に使用目的を書いて署名捺印が必要です。
鹿児島水族館のchikuさんから頂いた資料はこちら。他に詳しい資料(図解入り7ページ)も頂いてます、興味の有る方はメールや掲示板にてお問い合わせ下さい。


※脱穀処理を実行していたYasさんから、具体的な注意点を掲示板に書き込んで頂きました。