ピットロードのカタログを眺めてみると、駆逐艦や海防艦と言った艦種のラインナップの数の多さに 改めて驚かされる。今回取り上げる『リヴァモア』バリエーションも含め、『ピットロードカタログVol.6』に 載っているWシリーズ(WW2大戦艦艇シリーズ)全57アイテムの内、駆逐艦、海防艦、護衛駆逐艦は全32 アイテム、実に半数近くを占めている。戦闘艦艇とは言え、どちらかと言えば地味なフネを堅実に製品化 する、その姿勢には頭が下がる思いである。
今回取り上げる『ベンソン/リヴァモア』級のキットは、そのピットロードの十八番とも言える
キットな訳だが、約3年前に始まったこのキットチェックにおいて、その駆逐艦キットが登場する
のは、以外な事に、今回が初めてである。
まあ、それはさて置いて、実艦はフレッチャー級を補完する駆逐艦勢力として、太平洋のみ
ならず大西洋においても縦横の活躍を見せ、また、バリエーションも豊富な、実に模型向きと
言えるフネである。
久々の新金型の駆逐艦キットである(『マドックス』と言うのが有ったが、これは既存の金型の パーツ替えである)。メーカの真骨頂(なんて言って良いのか??)である艦種が、今回はどういう 具合にキット化されているのか、いざチェック。
(『リヴァモア』『モンセン』『初代あさかぜ』 『ベンソン』『コールドウェル』)
一挙に5アイテム。バリエーション展開の得意なピットロードではあるが、それでも、(実質的に)一つ の金型でこれだけのアイテムを揃えられる、と言うのは凄いの一言。さきに言っちゃうと、ほぼこのキット 内容だけ(=大きな追加工作なし)で、角型艦橋を持ったリヴァモア後期型と、DMS(高速掃海艦)改造艦 を除く殆どのバリエーションが作れてしまうのだ。
パッケージトップは、『リヴァモア』『モンセン』『初代あさかぜ』はスカイウェーブお馴染みの吉原幹也 画伯、『ベンソン』『コールドウェル』は藤原画伯(すみません、下の名前が分かりません)。
今までに駆逐艦を多く手がけてきた経験があるだけに、流石に手馴れたものである。コンバーチブルな 設計の割に、パーツ数は以外と少なく、内容は実に簡単なものとなっている。
艦首楼甲板は別パーツ化されており、この部分だけに付いたタートルバック風の丸みがキレイに再現 されている。艦橋は前部の丸み(パーツA29)を別パーツ化し、”改前期型”とも言うべき艦橋を持った タイプの作成に簡単に対処出来るようになっている。
艦橋と言えば、羅針艦橋後部が絶壁頭になっているが、実は、羅針艦橋は後ろも丸まっていて、
上から見ると、ちょうど小判型と言うかコロッケ型と言うか、そんな感じになっている。あまり目立つ
所では無い…とは言っても、これは実に残念なミス。前後の長さは合っているみたいなので、気になる
向きは角っこに丸みを付けて対処すれば良いだろう。羅針艦橋の丸窓はパーツA30、A31にモールド
されているが、抜きの関係でU字型になってしまっている。これは作り直したほうが良い。
艦橋まわりでもう一つ。『初代あさかぜ』で、パーツA29を接着するように指示されているが、この
パーツは不要なので注意。また、『コールドウェル』の場合、艦橋ウィングに20mm単装機銃が付くが、
実艦は、この部分が拡張されている(艦橋ウィングに20mm機銃を追加された艦全てに当てはまるようである)。
艦橋前面の機銃プラットフォーム(パーツA28)は、二回りくらい大きく作り直した方が感じが良く
なると思う。細かいが、このプラットフォームも幾つかの微妙な形状バリエーションがあるようである。
マストは、レーダープラットフォーム(パーツA19、A20)や見張り所(パーツA16)が別パーツに
なっているのがユニーク。見張り所は、どこの海軍も形が似たり寄ったりなので、米艦以外にも流用
できそうである。これ、武装セットに入っていたほうが嬉しかったなあ…(笑)。
5インチ砲のフルシールドは4基入っているが、ランナー1枠に5基入っていたほうが嬉しかった (これだとフレッチャー級1隻まかなえるので)。初期型の爆雷投射機(パーツB9、B10。)は、 そのまま取り付けると、異様に浮いた感じになっている(と言うより、本物はキットのパーツの 様なユニットになっていない)ので、下部の接着部分はまっ平らに削った方が良い。装載艇を 乗せる台(パーツB38)もゴツ過ぎる。
ボフォース40mm機関砲は、駆逐艦用にシールド無しの台座が用意されている。後部に板状のものが 付いているが、この部分は、実物は手すりとなっているので真鍮線などで是非作り直したい所。
竣工時を再現した『リヴァモア』の場合、シールド無しとなっている3、4番砲は、25口径127mm砲
のパーツ(パーツB6)を使うように指示されている。米艦に詳しい人なら誰もが疑問に思った事と
思うが、各資料を見ても、ベンソン/リヴァモア級の主砲は”38口径127mm砲×5”と説明されている。
果たして25口径砲が搭載されていたと言う事実があったのか私も疑問に思い、手持ちの資料や海外
の海事関連サイトをリサーチしたり、また、当のピットロードのBBSにも疑問をぶつけてみたのだが、
得られた回答は「38口径砲の採用時期とベンソン級の竣工時期とを鑑みて、竣工直後のほんの一時期
のみ搭載していた可能性がある」と言う、なんとも煮え切らない物である。
ただ、私としても、ベンソン/リヴァモア級の全艦についてリサーチできた訳ではないし、市販の
資料にしても、全てが我々モデラーの嗜好を満たすような作りをしている訳でもない(事実、所々
端折ったり、間違いを書いている物もある)ので、まあ、38口径砲のパーツ(パーツB5)も2つ
入っている事だし、仮組みしてみて、見栄えの良いほうを選ぶ、と言うのもアリだと思う。
レーダー関連は、まあ、インジェクションと言う事で、突っ込んでもしょうがない部分だが、 『初代あさかぜ』に使用するMk.25射撃指揮レーダー(パーツB54)はとても使えた代物では無い ので、作り変えた方が絶対に良い。
ベンソン/リヴァモアに限った話では無いが、WW2の米駆逐艦は、武装の搭載についてはバリエーション
がとにかく多い。同じ装備にしても、主砲シールド形状に幾つかの差異が認められたり(例えば、
ベンソン/リヴァモアに使われた127mm砲のハーフシールドは2種類あったりする)、機銃の装備方法や
数も、爆雷兵装も、レーダーの搭載も、数え上げたら本当にキリが無い…と言った状態である。
自分の作る艦について、可能な範囲でリサーチしてあげたい所である(でも、それで悩んで手が
止まってしまう、と言うのも考え物(爆笑))。でも、これは米艦作成の醍醐味でもあったりする…
って、もしかしたらこんなのは私だけ(爆)????
別刷りで、『モンセン』には迷彩塗装図が入っている。グリーヴスとファーレンホルトに採用 されたメジャー12型迷彩の2パターンを解説したものだが、両面刷りにして、大戦末期に多用された メジャー3_系も幾つか紹介しても良かったのでは??和文資料では、米英海軍の塗装に関する資料 は皆無と言って良い状況なので…。
デカール。『初代あさかぜ』を除くキットには、2種の大きさの艦番号用デカールと、航空機
用の3タイプの星マーク、旗が入っている。艦番号は、印刷が鮮やかで繊細。大戦時用の番号デカール
は、白だけでは無くて、黒色の番号も欲しかった。
『初代あさかぜ』は艦名、艦番号、隊番号、旗、煙突用の白帯となっている。やはり貸与艦である
『はたかぜ(=元リヴァモア級のメイコム)』用のデカールもサービスで入れて欲しかった所だが、
ひょっとして、これは限定バージョン用に取っておいてある(笑)??
それはさておき、このキットは、恐らく作る人を選ぶアイテムだと思う。厳しい言い方をすれば、 米艦にさほど思い入れの無い人や最近のキットしか知らないような人にとっては、ディティールも控えめで 形もチャチなフネのキット、位にしか見えないだろう。『初代あさかぜ』と言うのもあるが、これも、 ディープなファンで無ければ…と言った感じである。
だがしかし、私のような(笑)米艦好きな人にとっては、これらキットは食指をそそられるアイテム である事に変わりは無い。何と言っても、実艦のバリエーションが多い。メーカとしても、多分この 事は強く意識している事だと思う。ようは「キットのままでも良いけれど、改造の素材としても 楽しんで欲しい」と言う事である。
今までに私が書いてきた様に、箱の中身だけである程度までのバリエーションが揃えられる構成に なっている。これは実際に改造をするにあたり、非常に助かるものであるのは言うまでもない。自作 する必要があるものと言えば、リヴァモアの後期型艦橋とDMS改造艦用の掃海具くらい(掃海具は鮮明 な資料が少ないので、その所は苦労するだろうけど)。『モデルアート』誌に載っていた『シムス』 級への改造も、慣れた人なら比較的容易な工作で作れるようである。また、大掛りな改造まで行かなくても、 塗装の方では戦前の明るいグレーからメジャー1、モデラー泣かせ(笑)のメジャー12(&12改)、 メジャー22、大戦末期のメジャー3_系列…と、随分な賑やかさである。
まあ、個人的には、久々に色んな楽しみを提供してくれるキットが出てくれた…と言う事で、とても 好感の持てるキットである。ああ、『カノン』『キャンプ』先送りにしてでも早く作りたいよう(笑)。
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