2002年の艦船模型界での大きな話題の中で、今回取り上げる「伊勢(いせ)型戦艦のリニューアル」と いう話題は大きなウェイトを占めていたと思う。
1971年(私の…ってのはいい加減クドイですかそうですか)に始まったウォーターラインシリーズ において、今も昔も人気の大きい重巡洋艦と戦艦は真っ先に製品化された訳であるが、その当時、旧 海軍に関する資料は今とは比べ物にならない量の乏しさであり、また、リサーチのレベルもそれ程深い ものではなかった。それは当然製品のクォリティに反映されてしまう訳である。
まあ、マスプロダクションの製品として売り出す以上は、全てを資料に忠実に反映出来る訳でも 無いし、省略せざるを得ない部分も出てくる訳だし、ある程度のディフォルメも入るだろうし、かかる コストも考えないといけない訳だし、それに当時の生産技術を現在の水準で批評するのは余りにも酷、と いう物だが、それでも、WLの戦艦のキットは難物である事には変わり無い。コレクションアイテムと しての存在から、個艦単位の作りこみが主流となってしまった観のある現在では、下手すると セミスクラッチ並の手間を要するアイテムでもあったりする。
、と言う訳で、1998年の『大和(やまと)』『武蔵(むさし)』に始まる、WL旧キットのリニューアル は古参ユーザにとっても、新規の人達にとっても歓迎されるものであった。最新の考証と現在の生産技術 での立体化と言うのも有るが、何と言っても、基礎的な部分にかかる手間が大いに省ける、と言うのが 一番大きいだろう。
そして、今回の『伊勢』型リニューアルである。まあ、その経歴は さて置いても、航空戦艦時代の”空母+戦艦”という突飛なスタイルは最も人気が高い(かく言う私も、実は 好き(爆笑))。恐らく、旧金型の戦艦アイテムでは結構売れた物だと思う(完全な推測)。旧キットの 内容は、まあ、(さっき書いたように)その時代ではかなり頑張った方だと思うが、やはり難物であった 事には変わり無い。それが2002年の技術&考証で如何に生まれ変わったか、いざチェック。
旧金型では、ネームシップの伊勢は”航空戦艦”として、2番艦『日向(ひゅうが)』は”戦艦”として リリースされていたが、今回のリニューアルにおいて、両艦ともに戦艦、航空戦艦の両バージョンがリリース される事となった。元々、このクラスは他の戦艦クラスと比べても、とにかく識別点の乏しいクラスで あるが、ハセガワお得意のパーツ超細分化(笑)により、インジェクションのマスプロキットとして、 可能な限りその違いを再現しているようである。また、各艦の戦艦-航空戦艦の相違点も可能な限り 再現されている事に変わりは無い。
今回のチェック対象は『伊勢』の戦艦・航空戦艦両バージョンのみとなるので、『伊勢』と『日向』の 相違がどこまで再現されているか、と言う事には一切触れられないので、ご容赦願いたい(イヤ、あの デカイ箱を4つも重ねて置いといたら家族に縊り殺されるって(爆))。
イヤもうこの箱のでかさったら。
正確には”でかさ”と言うより”深さ”な訳なんだけど、WL史上、最も”でかい”箱だったリニューアル
『信濃(しなの)』をわずかに巻き返してこの度目出度く堂々たるタイトルホルダーに…って、何書いて
るんだ私は(自沈)。
とにかく、実際に店頭で見て呆れてしまった方も居られると思う。事実、私もファーストインプレッション
が(心の中で)「何じゃ、コリャぁぁぁぁぁ!!」でしたから(笑)。既婚者の方々においては通勤カバンに
入らないので帰宅時に細君に見つかって哀れ半殺…
パッケージトップは、お馴染み上田喜八郎画伯による。戦艦の方は、まあ、スタンダードな航行時の 画で、航空戦艦の方は、飛行甲板をアッピールした、心なしか重い空をバックに、上空に艦載機『彗星(すいせい)』 を従えて航行する画である。
戦艦バージョンのほうは、空の青が印象的。そう言えば、旧版『伊勢』のトップも、空の青が印象的だった。
でも、改めて見ると、このクラスって、意外にシルエットが堂々としてるのね。
航空機キットが専門のメーカのなせる業なのか(んな事ぁー無い(※タモリ風))、とにかく、パーツの 細かさに置いては他のWLメーカの追随を許さないのがハセガワWLの特徴である。このキットも御多分に 漏れず、細かいパーツ割りである。うう、夢に見そう…(笑)。
全体的に、ディティールは弱い印象のわりには、結構メリハリが付いている。しかしその一方で ブルワークが全体的に分厚くなっており、ファンネルトップも今までと変わり無い出来栄え。艦橋 部の窓やマストのヤードの細さ、ボートダビット(パーツJ7)の雰囲気はいい線行ってると思う。
煙突部の櫓のラティス構造や航空戦艦バージョンのF15、F16は彫りを深くして立体感を強調して いるが、これ、もうちょっと頑張れば、タミヤWLに迫るような中抜き表現が可能だったのでは 無かろうか??特にF15、F16は無理をしてでも…と言う感じ。ブラストスクリーン(パーツC16、C17)は、 ディティールはともかく、厚みが有りすぎる(それに裏側にヒケ防止の肉抜きがあるし…)。
ケースメート方式の副砲(パーツK4、K5)は、砲シールドが円筒形になっておらず、一定の角度で 組み上がるようになっている。ケースメート部も、航空戦艦バージョンにそのまま対応出来るように、 塞がれた状態で成型されている。
航空戦艦バージョン。
戦艦バージョンとの相違は、飛行甲板を含め、主に船体後部に集中している。その最大の特徴である
飛行甲板だが、旧版と大した違いが感じられない。甲板は何か必要以上に分厚いし、軌条のディティール
も頂けない(それ以上に、あのターンテーブルのディティール…)。左右の対空武装プラットフォーム
も、取り付け位置がどうも低く感じられるし、プラットフォーム支柱も、現在の技術でああいう再現の
仕方は無いと思う。『信濃』は一つ一つをパーツ化していたし、アオシマが2月に発売するリニューアル
『飛龍(ひりゅう)』も、支柱が別パーツ化される事が確定しているし、ハセガワもやってやれない
事は無いのでは??甲板後部の支柱(噴進砲プラットフォームが付く部分)は、ちゃんと1本1本別パーツ化
しているのだが…。
噴進砲についても多くの批判が集まっていると思う。いちいちプラットフォームと一体化させる 必要があったのだろうか??それにサイズがでかい。要するに、最初に書いた飛行甲板ともども、 『瑞鳳(ずいほう)』『祥鳳(しょうほう)』で(多分)一番顰蹙を買った事を繰り返して しまっているのである。それでいて、このプラットフォーム自体は3パーツで構成されているのである。 チグハグな印象を受けるのは私だけでは無いと思う。
噴進砲に限らず、チグハグな印象を受ける部分が他にもある。パーツD6と一体化された後部マスト
支柱や、やはり煙突周りの櫓構造(パーツC2、C3)と一体化されてしまった機銃プラットフォームの
支柱、気合の入った艦橋後部デリック(パーツA5)に比して、気の抜けまくった様な印象の飛行機
収容クレーン(パーツC10)…。
慣れ不慣れに関わらず、組み立て前に充分過ぎると言うくらいに精読しておく事!!しかし、どうして こういう見にくい組説が出来るんだか…。組説が見にくいのはパーツ割を細かくしすぎたから??
戦艦バージョンの方はまだ良いのだが、問題は航空戦艦バージョンの方である。その最大の 特徴である飛行甲板に問題が集中してしまっているのは、どう言う事なのだろう??リサーチミス なのかリサーチ不足なのか、私もまさかこんな事になっているなんて思いもしなかった。パーツ 割にしても、先に書いたように、別に分割する必要の感じられない所が分割されていたり、また、 分けた方が良い所を一体化してしまったり、チグハグな印象が拭いきれない。
まあ、それでも流石に全体としては全くのハズレでは無いのだが、折角のリニューアルでこの 様な内容、と言うのは正直非常に残念である。細かい分割で個艦・時代の違いを再現すると言うのは 決して間違いではないが、パーツ割も無闇に細かくするのではなく、組説ともども、もっと ユーザの事を考えて設計して欲しいと思う。
ここでは触れていないが、WLとしては珍しく、専用のエッチングパーツが同時発売されている。 私は戦艦バージョン用のものしか目にしていないが、最近の一部サードパーティーのエッチングパーツ に見られるような行き過ぎたディティールではなく、そこそこに押さえた感じのパーツであった。 まあ、設計・発売元がこういうパーツもリリースしてくれる事自体は歓迎すべき事だと思うが、 それでも、私としては、安易にエッチングパーツに頼らせる(或いは頼る??)ようなキット開発 では無く、タミヤの『プリンツ・オイゲン』や『クルスク』『最上(もがみ)』の様に、素のまま でも高いグレードで組み上がるようなキット開発を心がけて欲しいと思っている。特にハセガワWLは、 他のメーカのWLキットに比して、細部の表現に進歩らしい進歩が感じられないので…。
…もしかして、このキットはエッチングパーツも含めて評した方が良かった??
==戻る==