惑星連邦/宇宙艦隊が保有している宇宙艦には、様々なクラスがある。 それらの規模も色々だが、これら宇宙艦に、ほぼ共通して使用されているテクノロジーがある。 そして、これらは今や宇宙艦には必要不可欠のシステムとなっている。これらが有って、 はじめて未知宇宙の探査任務や科学調査、領域哨戒任務が行えるのだ。
ここでは、その”必要不可欠の”テクノロジー、主に艦の運行に欠かせない、代表的な 大型システムを解説している。
ワープドライヴ Warp Drive
宇宙艦には絶対不可欠のテクノロジーである。物質/反物質・対消滅反応型ワープ コアで発生した莫大なエネルギーをワープナセルに送り込み、光を超えるスピード で”飛ぶ”事を可能たらしめている。
一般的に、物質/反物質の衝突(この反応は、”対消滅(ついしょうめつ)”と呼ばれる)に よる消滅反応は100パーセントのエネルギー変換(質量がすっかりエネルギーに変ってし まう)を起こす。これは理想のエネルギー源であるが、当然、その反応は強烈な現象を引 き起こし、制御が極めて難しい。現在の所、それの制御を可能とする物質は、ダイリチウム という名前の結晶体のみ。この結晶体をワープコアの炉心に用い、物質/反物質反応を制御 している(実際にはプラズマ流(ストリーム)という形でエネルギーが発生する)。
ワープコアで発生した強大なプラズマ流はワープナセルへと送り込まれ(大抵の艦では、 ナセルは船体から翼状に伸びたパイロンに取り付けられており、2基1組の構成となっている)、 ワープナセルはワープ航行の為の亜空間(サブスペース)フィールドを発生させ、ワープを行 う。これにより、艦は亜空間に入り込むような形となる。亜空間には相対性理論が適用されな いので、そのために相対性理論下にある通常空間(我々の住む宇宙空間の事である)では不可 能な、超光速での航行が可能となるのである。
地球暦2063年に初めてワープに成功したゼフラム・コクレイン博士の<フェニックス>の ワープ・ドライヴがルーツとなり、これまで改良を重ねられて来たが、このワープ・ドライヴに よるワープ航行が、宇宙構造にダメージを与える事が後に判明する。そのために、一時期は緊急 時を除き、最大ワープ速度をワープ5までとする制限が設けられていたが、イントレピッド級宇宙 艦から、宇宙構造にダメージを与えない新型ワープシステムが実用化され、この問題は逐次改善 されつつある。
フェイザー砲 Phaser Cannon
宇宙艦隊艦船の殆どが装備している指向性エネルギー兵器。”フェイザー”とは 『位相エネルギー変調(PHASed Energy Rectification)』の 頭字語である(※)。
フェイザーは、個人用のフェイザーガンなどに見るように、惑星連邦では最も 普及した武器であり、その原理は全く同じである(規模が違うので、当然その破壊力も システムの大きさに比例する)。フェイザーガンが、”軽い麻痺”レヴェルから”消滅” レヴェルにまで出力調整できるように、艦のフェイザーも、惑星表面への威嚇や暴動鎮圧 の為に、”麻痺”レヴェルに調整が可能である。
”砲(キャノン)”と言うのは地球の大昔の帆走軍艦時代から続く慣例的な呼称である。 その外観は、コンスティテューション級やミランダ級が搭載しているタイプは半球型の 埋め込み式(フェイザー・バッテリー(砲架))、アンバサダー級からスタンダードと なったタイプはレール状のエミッター(発振器)がぐるりを取り囲んだタイプ (フェイザー・アレイ(砲列))である。それぞれ船体各所に装備されているので、 死角は殆ど生じない。
また、後期ミランダ級の多くは、船体両舷に大型のフェイザー・キャノンを2基搭載 しており、これの外観はまさしく”砲”である。
※”rectification”とは、本来は『調整』と言う意味だが、 この場合は『変調』と言った方が適切と思われる。
光子魚雷 Photon Torpedo
フェイザー砲と同様、宇宙艦隊艦船の標準兵装。ワープドライヴと同じ物質/反物質・対 消滅反応をもって、標的を破壊する一種の誘導兵器。”魚雷”と言うのは、これも地球の 19世紀末の海軍から続く慣例的な呼称であり(”トーピドー”とは、本来シビレエイの事を 言い、日本語の”魚雷”と言うのは”魚型水雷”の略である)、実際には、いわゆる『対艦 ミサイル』の様なものである。
光子魚雷の破壊力の元は、ワープ・ドライヴと同じ、物質と反物質の対消滅反応エネルギー である。その反応で生ずる莫大なエネルギーにより、フェイザー砲よりも多大なダメージを 敵に与えるのである。よって、近距離(標的から数Kmという距離)で魚雷を発射すると、 自分にも被害を及ぼしかねない。
魚雷本体はおよそ地球人タイプのヒューマノイドの背丈と同じくらいの大きさで、 発射されると赤い光を発しながら飛んでいく。タイプによっては小型の弾頭を拡散させる 魚雷もある。戦闘以外の目的としては、破壊力を無くして、暗黒星雲探査用の、 一種の”照明”代わりにする、といった利用方法も可能である。
船体分離システム Separetion System
本来は、船体が致命的ダメージを受けた時の緊急システムである。
殆どの宇宙艦は、メインブリッジの有る円盤型(もしくは球型)の第1船体(プライマリ・ハル) と葉巻型の船体とワープ・ドライヴを持つ第2船体(セカンダリ・ハル)とに分かれている。 脱出時に乗員全員を第1船体に収容し、第1船体を分離させて第2船体を放棄、安全宙域に離脱 する物であった。第1船体はインパルス・エンジンにより推進し、ランディング・ギアも備えて いるので、必要とあらば惑星表面に降着する事も可能である。
ギャラクシー級宇宙艦からは、この様な緊急時の分離だけではなく、自在に分離/再結合可能な システムとなっている。これは、乗客や乗員の家族等の非戦闘員が乗り組んでいる艦が戦闘に 突入したとき、無用の犠牲を出さない為に分離するのである。船体の呼称も変化しており、 非戦闘員が乗る、メインブリッジを有する第1船体は『コマンド・セクション』、 ワープ・ドライヴとバトルブリッジ(戦闘艦橋)を有する第2船体は『バトル・セクション』と 呼ばれる。
戦闘突入前に分離を実行し、コマンド・セクションは安全圏に退避、必要な機能が集約 しているバトル・セクションが戦闘を行う。戦闘後に各船体は再結合し、元の姿に戻るのである。
コマンド・セクションはその性格上、原則的には戦闘に加わらないが、フェイザー砲やシールド などは一通り備えているので、自衛行動くらいの戦闘行動は行える。
このシステムは、主に大型艦に備わっているシステムであり、ミランダ級やコンステレーション 級、ディファイアント級のような第1・第2船体の区別が全く無い艦、ニュー・オーリンズ級や イントレピッド級などの小〜中型艦には備わっていない。
シャトルクラフト Shuttlecrafts
これは艦のシステムとは言わないが、全ての艦が搭載しているので、ここで取り上げた 物である。
惑星への上陸(この言い方も、慣例的なものである)には、専ら転送装置を使うのが 速くて便利だが、時には転送不可能な磁気嵐やイオン嵐の中へ降り立たねばならない場合がある。 そのような時に活躍するのがこのシャトルクラフトである。ほかにも救難活動や転送システム では運べない大型資材や転送不能な不安定物質を運んだり、艦外活動の支援等を行う時にも用 いられる。
これらシャトルは様々なタイプが有り、各艦で搭載しているタイプや数もまちまちである。 ギャラクシー級宇宙艦<エンタープライズ>NCC-1701-Dの場合では、小型の 『パーソナルシャトル』15・15A型と16型、通常型の6型と改6型、大型の『カーゴシャトル』 7型と9A型、作業用のワークポッドと、これだけのタイプが搭載されている。うち、 パーソナルシャトルとワークポッドを除くシャトルは小型ワープドライヴを搭載しており、 低速・短時間のワープ航行が可能である。
ほか、ディファイアント級のネームシップ<ディファイアント>NX-74205には、 同時に開発されたディファイアント級専用の18型が搭載されている。また、行方不明 になった<ヴォイジャー>NCC-74656を含むイントレピッド級宇宙艦の多くが、大型 パーソナルシャトルの9型を搭載している。
多標的強襲モード Multivector Assault Mode
現在、試験艦<プロメテウス>NX-59560で評価実験が行われている、全く新しい 戦闘システム。
ギャラクシー級宇宙艦から、戦闘突入時に船体の分離/再結合を自在に行う事が可能になっ たが、この場合は、ワープドライヴと主要武器システムを備えたバトル・セクションのみが 戦闘を行うだけである。この多標的強襲モードは、従来の船体分離システムの概念ををさら におし進めたシステムで、分離した全ての船体がバトル・セクションとして戦闘行動を執る という、非常に野心的なシステム設計となっている。
この<プロメテウス>の場合、船体は第1船体と、第2船体上部、第2船体下部の3つの セクションに分割され、分離時は各船体にナセルを2基づつ持つ(第1船体は、隠顕式の小型 ナセルが縦型に配置されている。)。分割されたセクションは、どれもが1隻の宇宙艦として の能力を持ち、そして同等の戦闘能力を有することになる。戦闘システムというだけあって、 分離シークェンスは迅速に、スムースに行われる。またこのシステムには、特に有事の深宇 宙区域で戦闘行動を執らねばならなくなった場合、一時的に戦力を増加させられるという メリットを持つ。
現段階においては、まだ実験段階なだけあって、システムを有効活用する戦術は確立されて いない。また<プロメテウス>の試験艦としての能力からしても、高度な運用試験はまだ 望むべくも無いという状態だが、実験と改良が順調に進めば、宇宙艦としては画期的なシステ ムにもなりうるであろう。
このシステム自体の詳細は発表されていないので(実験段階の戦闘用システムなので当然だが) これはまったくの憶測に過ぎないが、ボーグの第一次地球侵攻時に<エンタープライズ> が執った戦術が多標的強襲モードの着想になったと思われる。この時、艦を指揮していた同艦 副長ウィリアム・T・ライカー中佐はコマンド・セクションに反物質スプレッド弾を用いさせ、バ トル・セクションの支援を行わせている。
量子魚雷 Quantam Torpedo
宇宙艦隊の対・ボーグ戦略の一環として、新たに開発された誘導兵器。
量子魚雷は、”零点エネルギーフィールド”と呼ばれる(”真空のエネルギー”とも”宇宙 エネルギー”とも呼ばれる)エネルギー場から限定的にエネルギーを開放し、それを破壊力と している。従来の光子魚雷の物質/反物質・対消滅反応とは比べ物にならないエネルギーで あり、簡単に敵艦のシールドを無力化することが可能である。その原理から、おそらく既知の 兵器システムの中では最高の破壊力を持つと思われる。
その余りにも強力過ぎる破壊力から、近隣諸国へ刺激を与える事を押さえる意味もあり、宇宙 艦隊の全艦艇には配備されていない。この魚雷を有するのは対・ボーグ戦艦艇の本命として整備 されているディファイアント級と、新鋭大型艦のソヴリン級、特に指定されたごく一部の大型艦 のみである。そして、量子魚雷の使用は、ボーグ又はドミニオンとの戦闘に限られている。
この”零点エネルギーフィールド”からどうやって限定的にエネルギーを引き出しているのか、 その原理は公表されていない。名前から推察するに、”無”から何らかの形でエネルギーを引き 出すものと考えられるが、もしそうだとすると、これは物質/反物質の反応以上の、究極のエネル ギー源となる可能性がある。
緊急医療ホログラム(E.M.H.) Emargency Medical Hologram
医療活動のサポートを行ったり、事故や戦闘による被害で正規の艦医(医務長)の死亡などで 医療機能が大幅に損なわれた場合の対応として開発された自動システムである。一種のエキスパート・ システムであるが、ホログラム技術の応用により、プログラム自らが自身の持つ情報を駆使し、そして 自らを成長させる事が可能となった。
開発は宇宙艦隊・木星ステーション(Jupiter Station)のルイス・ズィマーマン博士が中心となって 開発されたもので、このシステムが生成するホログラム・イメージはズィマーマン博士をモデルにして いる。膨大な医療データベースを持ち、様々な医療テクニックを自在に駆使できる。
また、艦隊の今までの探査任務などで発見された医療情報もデータベースに盛り込まれており、例え ば、ジェイムズ・T・カーク艦長の指揮下で行われた”ファイヴ・イヤー・ミッション”で <エンタープライズ>NCC-1701医務長レナード・H・マッコイ中佐(当時)により発見された、 シグマ・ドラコニス7の古代文明の脳外科手術テクニックもプログラムされている。学習能力や状況対応 能力も持っており、プログラムの活動を通じ、新たな医療情報をデータベースに追加する事も可能である。
ホログラムは、イメージ投射用のホロジェネレーターが無いと起動できないので、E.M.H.を搭載した 宇宙艦の医務室は、壁面にジェネレーターが埋め込まれている(もちろん、通常のホロデッキでも稼動 可能である)。そしてE.M.H.プログラムには、”自分はプログラムである”と言う”認識”が プログラミングされており、自分がホログラム投射設備のある場所とコンピュータ端末のディスプレイ でしか存在出来ない事を認識している。
現在、宇宙艦に搭載されているモデル”E.M.H.-1”は緊急用システムとして、短時間の稼動を前提と されている(最大稼動時間は約1500時間)。現在、ズィマーマン博士は長時間稼動の可能な”L.M.H. (Long-term Medical Hologram:長期稼動型医療ホログラム)”の開発に取組んでいる。ほかに、 E.M.H.-1の発展型”E.M.H.-2”が現在実験段階にある。
他に、このシステムを持つ宇宙艦には、専用のメンテナンス用ホロ・プログラムも同時にインストール されている。
※参考文献