Task Force 700

アメリカ海軍・原子力潜水艦『ノーチラス』(竣工時)

U.S.Navy Nuclear-powered Submarine "Nautilus"SSN-571(at completion)


---原潜『ノーチラス』について---

ノーチラス・全体像

 海事史のみならず科学技術史にもその名を残す存在と言っても過言ではない、アメリカ海軍が1954年に 竣工させた、”史上初の原子力潜水艦”、かつ”史上初の核動力推進艦船”、そして、潜水艦と言う 存在が窮極の目標としていた”大気からの独立”を実現した、”史上初の真意の潜水艦”である。 建造はコネチカット州のエレクトリック・ボート社(のちジェネラル・ダイナミック社と合併)が 担当している。

 本艦の建造は、”原子力潜水艦の父”ことハイマン・G・リッコーヴァー大佐(当時)の強力な推進の もとに進められた。原子力潜水艦保有の主張は、この頃のリッコーヴァーが掲げていたもので、いわば、 己の信念を己の手で実現したものである。ちなみに、動力以外は、第2次大戦型の潜水艦を踏襲した オーソドックスな設計で、目的(=核動力の実現)をハッキリと絞り込んだ、リダンダンシー重視の堅実な ものとなっており、その設計コンセプト故に、姉妹艦は存在しない。

 艦名はオウムガイのラテン語名である。この頃の米潜水艦には、主に海棲生物の名前が使用されて おり、本艦もこの通例に則ったものであるが、特にこの名が史上初の原子力潜水艦の艦名に選ばれた のは、ジュール・ヴェルヌの古典的空想科学小説『海底2万リーグ(Vingt mille lieues sous les mers)』に 登場する同名の潜水艦に因んだから…とも言われている(ちなみに、竣工の同じ年に、ウォルト・ディズニー による同作品の映画が公開されている)。余談だが、ヴェルヌの『ノーチラス』は、米の発明家 ロバート・フルトンが1800年に設計した、史上初の実用的潜水艦の名前に由来するものである。

 数々の技術的困難を突破し竣工した『ノーチラス』は、'54年12月30日に原子炉が臨界に到達、 明けて'55年の1月3日には初の全力運転を行っている。1月17日、初任務に出動する際に発した、 ”Underway on nuclear power(原子力ニテ航行セリ)”は歴史的信号として有名である。 また、'58年8月3日には、潜行状態での、史上初の北極点通過を行っている。これも余談だが、1931年に 豪のヒューバート・ウィルキンス大尉が試みた北極点到達に使用された潜水艦の名前も、奇しくも 『ノーチラス』と言う。

 向後の米海軍の潜水艦の技術的指針に一定の方向を与えたばかりでなく、現在に至る原子力潜水艦の ルーツとして、その存在は大きなものである。1980年に退役した『ノーチラス』は、現在、生まれ故郷の コネチカット州グロトンにて、記念艦として余生を過ごしている。

---キットについて---

 もともと、完成品として流通していた浴玩『世界の艦船』のアイテムを、1回限りの限定生産品 として、組立キットの形でリリースしたもの。製造元はタカラトミー、発売元と原型製作は ピットロードである。スケールは1/700。

 元が完成品としてのリリースを視野に入れたものからか、部品数は最小限に押さえられ、パーツの 精度もスライド金型を多用し、ディティールはこのスケールとしては申し分なく、また、組み立て易い 構成である。ただ、ちゃんとした組説がはいっておらず、組み立ては箱を参考に行う旨が記載されている だけなので、この点、注意が必要である。

 この『ノーチラス』の場合、組み立てに困難は伴わないが、艦尾スクリュー周りの組み立ては注意を 要する。本艦は1965年ごろに、艦首甲板右舷に旋回式ソナー追加の小改装が施されているが、簡単な 追加工作で再現が可能なので、これを作ってみるのも面白いだろう。


◎1回限り、ってのは勿体ないなあ…

 タカラトミーとピットロードがタッグを組んで送り出す浴玩『世界の艦船』のアイテムを、まあ、安直な カタチではありますが、ユーザが好き放題にいじり倒せる(笑)組み立てキットとしてリリースしたのが、 今回取り上げるキットの素性でございます。

 …つーか、”SSNノーチラス”ってのは、艦船史では間違いなくビッグネームなはずなんですが、その インジェクションキットが、しかもスタンダードスケールでのキットが、限定品としてしか流通出来ない 日本の艦船模型事情、ちょっとユウウツな気分になったりします。

 …しかしサ、みんな、大和とか日本のフネばっか作ってて、いい加減飽きが来ませんか??作り手も受け手も、 もっと懐を、と言うか裾野を広げないとアカンのちゃうか、って最近思うんですがね…ま、私の嗜好がヨソ様と あまりに懸絶しているだけかもしれませんが(爆笑)。

 閑話休題。

 と言うことで、誰も作りたがらない??フネ、作っちゃいました。幸いな事に資料には困らないし(とは言え、 流石に”U.S.SUBMARINES SINCE 1945”引っ張り出したのは大袈裟でしたが(笑))、キットも簡単なもので 素性も良いし、と言うことで、”あまり余計な手を入れない”方針で、ササッと作ってしまいました。

◎製作記

 製作方針が方針なので、あまり書く事も無いのですが、以下、キット製作時の注意点を交えつつ、私がコイツに ナニをしたか、と言うのを説明して行きます。

・船体

 組説が無いので、恐らく殆どの人が実際に組んでみて初めて気づくと思いますが、艦尾の組み立てには注意が 必要です。スクリューが付く横舵(で良いのか??)パーツですが、これの取り付けは、船体パーツの合わせ 時に咬み込ませるようになっています。案の定、私がこれに気づいたのは船体を貼り合わせて、ご丁寧に ラッカーパテを盛った後(笑)。なので、潜舵の差込部分を削って、後ハメ可能な形にして取り付けました。 まあ、組み立て時に便利なので、ここは素直に後ハメ式にした方が良いです。差込部分がしっかりしているので、 苦も無くビシッと水平に取り付けられます。船体の合わせですが、接着剤を多めに付けてしっかりと圧着するか、 パテ盛りして合わせ目を整形した方が良いでしょう。

 スクリューは、今回は塗装前に取り付けましたが、マスキングの事を考えると、塗装後に取り付けるのが 良いと思います。

 縦舵も合わせは良いですが、しっかり差し込まないと、船体との間に隙間が出来やすいです。差込がきつい ですが、まあ、しっかり差し込んだところで、若干の隙間は出来るので、それはサーフェイサーを塗りこんで 対処しました。

 艦首潜舵は、ここでは折りたたみ状態にしてみました(資料写真の殆どが折りたたみ状態だったので、 つい思わず(笑))。折りたたむ際は、内側に来る部分の突起はキレイに削ってしまいます。また、この潜舵は、 キットのままでは長すぎるので、畳む畳まないに関わらず、詰めた方がいいでしょう。これはもう、写真と ニラメッコしながらの作業です。また、各舵は、フチを削ってシャープに見えるようにしておきます。

 甲板の艦首尾のハッチ状モールドは、実艦ではここまで盛り上がってませんが、そんなにおかしく見えない し、まあ、ディティールのメリハリが付いて良い、と言うことで、そのままにしてます。

 で、やろうやろうと思ってコロッと忘れてしまったのですが(笑)、小さい部品ですが、アンカーを作って やると良いでしょう。

・セイル

船体  スライド金型の使用で、1パーツながらディティールをしっかりと再現しています。あまり目立ちませんが、 パーティングラインが所々存在するので、気になるなら処理してしまいましょう。あとやる事と言えば、セイル上部、 艦首方向にある見張り所の窪みを、キットのような楔形??から半円状に見えるように削ってやる事。あまり深く キッチリ彫りこまなくとも、フチ部分を薄々攻撃するような感じで行います。削りこみはデザインナイフで十分 間に合います。また、ここには透明の小型のウィンドシールドがつきますが、これもスルーしました(作っても、 あまり見栄えしないかな??)セイルに取り付けるのは、パーツ番号3番の潜望鏡と、あと、パーツ番号2番の装置 を、長さを詰めて収納状態として取り付けてみました。これは資料を見て、パーツの頭とセイルの天井が一致 するように合わせながら切り詰め、また、垂直に立つように気を付けながら接着します。

 あと、ホイップアンテナの追加を行うと良いと思います。位置はセイル上端のど真ん中で、アンテナは両舷に 付きます。これはL字型に曲げた0.2mm真鍮線を使いました。長さは、資料を見ながら適当に。取り付けは塗装後に 行ったほうが、船体の塗装作業がやり易いです。

・塗装

 エアブラシ塗りで、今回、初めての試みとして、”シャドウ吹き”なるものと、油絵の具によるフィルタリングに 挑戦してみました。塗装は箱裏の説明に概ね従ってますが、使用した塗料は主にタミヤアクリル、細部にクレオスの 水性ホビーカラーとタミヤエナメルです。

 全体にサーフェイサーを吹いたところで、まずはダークシーグレイをマスキング無しで上半分に吹きますが、 タミヤのダークシーグレイは暗すぎました。クレオスの同色が何故か手元に無かったので分かりませんが、 これはもしかして色指定の間違いでは??明るめのグレイを使えば良かったとちょっと後悔。なので、これは 後々のフィルタリングで挽回しましょう。

 ダークシーグレイが乾いたところで、その色を残す部分をマスキングして、次に、つや消し黒と指定されている部分に、 ジャーマングレイを吹きます。ジャーマングレイが乾いたところに、またマスキングしてハルレッドを吹きつけ。

 これらの塗装が終わったところで、凹部とハルレッド塗り分け部分を中心にシャドウを吹き付けます。使った色は、 かなり希釈したジャーマングレイ、ジャーマングレイ+フラットブラック。これら2色を、下地色に応じて使い分け ました。吹きつけの際、手元がブレて上手く吹きつけ出来ませんでした。色も、もうちょっと考えた方が良かったかも しれません。シャドウ吹きの後、ライトグレイ系のオイルパステル(クレヨン)で軽くドライブラシします。その後、 細部の塗装(オレンジ、赤、緑)とデカール貼りを行います。デカールは、フィルムは薄いですが、何だか品質悪そう なので、マークセッターを併用したほうが良いでしょう。また、やけにテカるデカールなので、仕上げのクリアーは 欠かさず吹いたほうがいいと思います。スクリューは、エナメルのゴールドリーフ。

 フィルタリングと墨入れを行います。ここで油絵の具の登場です。使ったのはホルベイン社のもので(美術屋さんに 普通に置いてあると思います)、ニュートラルグレイ、グレイ・オブ・グレイ、ランプブラックの3色の混色です。 フィルタリングにはニュートラルグレイとグレイ・オブ・グレイの混色を、オドレス(無臭)ペトロールで希釈して (ペトロールに、微かに色が付いている位までに希釈)、全体に筆塗りしていきます。これで塗装が多少明るく (微妙に明るく)なりました。

 フィルタリングが乾いたところに、今度は墨入れを施します。ランプブラック主体に、ニュートラルグレイを 混ぜたブラックに近いダークグレイを、流すと言うよりかは描き込むように凹部に塗って行きます。多少のはみ出しは、 エナメル塗料と同じように、ペトロールを染み込ませた綿棒でふき取ります。最終仕上げは自前のサテンクリアー (半ツヤクリアー。別に仰々しい物でもなく、フツーのアクリルのクリアーとフラットベースとを混合して作った ものです)をエアブラシで吹いてフィニッシュ。以前に作っていてずっと置きっぱなしだったサテンクリアーですが、 希釈加減が良かったのか、良い感じにエッグシェル調のツヤ加減に仕上がってくれました。

 油絵の具による仕上げですが、エナメルと違い、チューブ入りでペースト状の濃度のために希釈の濃度、色相の コントロールが行いやすいように思います。また、エナメルのように、過度に薄めても、乾燥後にそれが下の塗膜へ シミになったりする事も無いようです。今回は、混色と希釈を紙パレットの上でやってみました(希釈は、パレット 上で、ペトロールを含ませた筆で絵の具を延しました)が、思うままにコントロール出来ました。向後はこれで 仕上げを行って行こうかと。


◎参考資料


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