機長2

    ただ今飛行中 3        Kaibun航空Topへ




 きらめく満天の星は
 今夜もあなたにすてきな物語を語りかけてくれるでしょう。
 KAIBUN航空があなたにお送りする
 お笑いの不定期便ジェットストリーム
 これから、再出発です。
 皆様の夜間飛行のお供をいたしますパイロットは
 もちろん、私 YABUです。
 
第1話

 遠い地平線が消えて
 深々とした夜の闇に心を休めるとき
 スチュワーデスが通路をなにか呼びかけながら急ぎ足でこちらへ来ます。
 「お客様の中にお産婆さんはいらっしゃいませんか」
 初老の淑女が手をあげました。
 
 また、しばらくしてスチュワーデスが呼びかけます。
 「お客様の中でタライを持っている方はいらっしゃいませんか」
 一人のお客が手をあげました。
 しばらくしてまたスチュワーデスが呼びかけます。
 「お客様の中でハサミと糸を持っている方はいらっしゃいませんか」
 幸いハサミと糸を携帯していたお客がいました。
 
 しばらくして、またスチュワーデスが呼びかけます。
 「お客様の中に牧師様はいらっしゃいませんか」
 初老の紳士が手をあげました。
 しばらくして、またスチュワーデスが呼びかけます。
 「お客様の中に結婚指輪のスペアをお持ちの方はいらっしゃいませんか」
 
 

 「ねえ、あなた、たらいってご存じ?」 tokotoko
 

 
 第2話
 
 遠い地平線が消えて
 深々とした夜の闇に心を休めるとき
 スチュワーデスの機内放送がゆったりと流れます。
 
 「皆様、さきほどはご協力ありがとうございました。
  赤ちゃんもお母様も大変元気です。」
 機内には安堵の声があがりました。

 さらにスチュワーデスの機内放送は続きます。
 「ただいま、牧師様の立会いのもと
 お母様と当機の機長が機内で結婚式をあげました。」
 
 機内はやさしい祝福の拍手がわきあがりました。
 「現在、当機は副操縦士が操縦を行っております。」
 機内は「さもあろう」という空気が漂いうなずく乗客もおりました。

  「たったいま、機長がパラシュートで当機を脱出してしまいましたので。」
 
  
 
「ねえ、あなた、人生って諦めることも必要ですわねえ」 tokotoko

第3話

遠い地平線が消えて
深々とした夜の闇に心を休めるとき
後部座席の乗客がスチュワーデスに何か耳うちをしました。
スチュワーデスは急ぎ足で操縦席に入りました。

まもなくスチュワーデスの機内放送がゆったりと流れます。
「当機は近くの飛行場に臨時に着陸いたします。」
母子の状態に変化がおきたのかと、
機内は気づかいのざわめきがひろがりました。
さらにスチュワーデスの放送が続きます。
「機長のパラシュートが翼にひっかっかっておりますので。」


・・・・・「ねえ、あなた、飛行には差し支えないんでしょ?」・・tokotoko

第4話

夜の飛行場に臨時着陸した旅客機のドアが開けられました。
タラップを登る数人の乱れた足音が聞こえます。
まもなく、両脇を飛行場の職員にかかえられた一人の男が
機内に放り込まれ、ドアが乱暴に閉められました。
男は制服の上着とズボンの汚れを両手でバタバタとたたき、
コックピットへと消えました。

ほどなく旅客機は離陸しました。
かなりの急上昇でした。


「ねえ、あなた、人生って何をしたかより何をしようとしたかが重要なんでしょう?」・・・tokotoko